家にある本を読む

三月初めから三日前くらいまで、だいぶ精神が悪かったので、意識してインターネットから離れていた。スマートホンからディスコードを初めてとしたSNSアプリをアンインストールし、暇になったら本を読んで過ごしていた。

読んでいたのはこの三つ。

上二つはエンタメ小説的なものだ。高校を卒業してからあんまり読みつけないジャンルだったけど、おもしろかった。目的と体調によるが、雑多な人間の短文をただ眺めて時間を潰すのと、プロのエンタメを読むのは種類が異なる時間だなと思った。人の感情に引っ張られやすいときは思い切りエンタメを楽しむのがいいのかもしれない。

エンタメ小説はただ楽しい!面白い!だけではなく、その前に「ぐぬぬ……」となるシーンがある。ストレスがあったうえでのすっきり面白い!なので、感情のふり幅的にはSNSと大体同じである。楽しさにはある程度の不快感がつきものなのかもしれないと思った。

『わたし、定時で帰ります』はかなり良くできている話だった。タイトルからは定時で帰りたい主人公VSそれを決して許さない会社というようなものを想像していたのだが、会社も一枚岩ではなく、そして主人公の心情も多層的で、なかなか面白かった。ストレスターンが本当にストレスなので、読むなら一気に読んだ方がいい。

『元彼の遺言状』は主人公がぶっ飛んでいて、時折モノローグで挟まれる「私はこういう人間なのだが……」というぶっ飛び自己紹介が面白い。ミステリ的には普通だが、まあ楽しめた。

上の二つを読んで小説を読む体力がついてきたので、途中まで読んで積んでいた『クララとお日さま』を再開した。カズオイシグロは学生の頃に『日の名残り』の原書を読む講義があって以来である。原書がどうにも難しく、私は翻訳版を購入してカンニングしながら講義に参加していた。小難しい話でとても私にはエンタメ感覚で楽しめるものではなかったのだが、内容が3/4に差し掛かってきたあたりで作品に対する向き合い方がわかってきて、『日の名残り』自体はかなり好きになった。

『クララとお日さま』も同様に、後半をしばらく過ぎたあたりでやっと読み方がわかってくるものだった。難しいけどどこか嬉しさがあり、理解したとはいいがたいが妙な共感がある作品だった。

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