文字を書くことと、考え事と、万年筆 &拍手返信

文字を書くのが嫌いだったが、書くのを避けているうちに考え事すらできなくなってしまった。
そんな状態だった私が、万年筆の購入により考え事とメモができるようになった、という話である。

ちゃんとした文字を書くのが嫌いだった。

「ダイナミックなノートだね」

「汚いわけではないんだけど、ひたすらに読みにくいんだよなあ」

私の、自分の書く文字に関する評価は常にこのようなものであった。とにかく、「字を丁寧に書く」ということが苦痛でしょうがない。丁寧に書くことで、思考を記録するスピードが落ちるのがストレスだ。多くの人が身に着けている、漢字に対して平仮名は少し小さめに書くとか、単語間でやや字間を広げるとか、そういう癖がついていない。いつだって好きな大きさで行幅いっぱいに最強の筆圧を込めて書いてきて、そんな、他者から見た読みやすさを考慮しない字は、必然的に読みにくい。

字が汚い人間は、自分の汚い字を問題なく読めたり、ほかの字が汚い人間の字を読めたりというイメージがあるが、少なくとも私の場合は、自分の字を読むのも苦痛である。だって読みにくいので…。

筆圧が強いから手は疲れるし、アウトプットされる文字は汚い。鉛筆の粉でノートは汚れ、字を間違えたら消しにくい。そんな調子であるから、個人的に考えをメモするという習慣がなかった。もともとしゃべることが大好きで、得意であったから、話して思考を整理する、という方法を専らとっていた。

しかし、時が経ち、私は一人暮らしとなった。しゃべろうにも話す相手がいない。また時が経ち、記憶力が落ちてきた。以前は自分のしゃべったこと、他人のしゃべったことを細かく覚えていたが、もうそのようなストレージは残っていない。どんどん考えたことを忘れていくようになった。そして、アウトプットの手段を失った考え事が脳を占領するのが嫌で、考え事をすることを忌避するようになった。音楽を流し、ラジオを流し、アメトーーククラブのバックナンバーを再生し、他人の言葉で脳を埋めて、考え事をするのをなるべく避けるようになった。

すると、無音が耐えられなくなってきた。無音になると途端に動けなくなる。人と話すと、人の話し声が聞こえると、やっとどうにか動き出せる。そんなレベルになってしまった。幸い世の中にはラジオやポッドキャストが豊富に存在し、作業もくりなどで話し相手もたまにみつかる。しかし、考え事ができない、無音だと動けない、という状況はかなり不便であった。

そんな時、後輩が「モーニングノート」を始めたと教えてくれた。岡田斗司夫のユーチューブで見て、ノートに考えを書くようにした、と。モーニングノートは朝にやるもので専用の形式があるのだが、それ以降考えを書きつけるようになったとも言っていた。

考え事を書く、ということに対するあこがれはまだ消えていなかったし、後輩がやってみてそれなりに続いているということもあり、私も興味が出てきた。そういえば、同期が万年筆にはまっており、「書きやすい」と言っていたっけ。何事も形から入るのが好きな私は、後輩に教えてもらった帰りに文房具屋に足を運び、ノートと万年筆を購入した。

購入したノートと万年筆

なんだか地味な割に気が利いていて、親しみやすいデザインだったので買ってみた。「モーニングノート」をやってみようか迷ったが、長く書いたりいろいろ決まりごとがあるのは難しい。とりあえず、年月日と時間を最初に書いて、メモのようなものでも、頭に浮かんだら書き込むことにした。

驚きだった。万年筆は、いくら書いても疲れない。力を入れなくても、十分な濃さのインクが出る。強弱のようなニュアンスが付きやすく、気持ち字もきれいに見える。また、「万年筆で字を書いている」という形によって、「落ち着いて書いてみよう」という気持ちにも慣れた。

かくして、私は考えを書きつける習慣を手に入れた。調子が悪い日は調子が悪いことをそのまま書いているので、読み返せばいつから調子が悪いのかがわかる。本業のメモも一緒くたにしているが、おかげでいつから何の問題に取り組んでいるかもすぐにわかる。物事を書きつけて安心して忘れられるようになったので、なんとなく精神の調子がいいような気がする。

だんだん、自分の書いた文字にも自信がつくようになって、手書き日記も始めることができた。今月は#novelmberというお題企画があるので、それに沿ったエッセイを書いてみたいと思っている。とりあえず11/3の分は書いた。

文字が書ける、というのは当たり前のことのように思えるかもしれないが、悪筆で自分の字が苦手な私は、万年筆の力を借りることでようやっとメモの習慣を獲得することができ、考え事をする力を回復した。私にとっては、書きやすいシャーペンやボールペンではなく、万年筆が必要であったのだと思う。

 

ちなみに、上記のMD万年筆は紛失してしまった(おい!!!!)。ので、奮発してPROCYONという万年筆を買ってみた。MD万年筆はカートリッジ式であったが、インク瓶にあこがれていたのでコンバーター式に。

色はパーモンオレンジ。

インクはSHIKIORIの「奥山」。

ずいぶんかわいい色になってしまったので、黒色用の、MD万年筆くらいの価格帯のものをもう一本買おうか迷っている。kakunoという万年筆が手軽だと進められているので、そのつかい心地を試してみるのもいいのかもしれない。おすすめの万年筆、使っている万年筆などあれば教えてほしい。

以下拍手返信

ちょっと前からちょこちょこ覗かせていただいています。個人サイトへの考え方、すごく共感します。私はSNS疲れで今年に入ってからサイト開設したばかりですが、個人サイトすごく心地いい、楽しいな~~と満喫しています。またお伺いさせていただきますね!お互い楽しみましょう!

ありがとうございます。送り主さんの個人サイトにも行ってみたい!ので、気が向いたら教えてください。こんな風にコメントをくださる方がいるから、寂しくなく気ままにできるな~と思います。本当にありがたい…。自分の城でのびのびするの、いいですよね。

 

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